インテリアスタイリスト・みつまともこさん/新しい服をきれいに着たいから、手放す仕組みをつくりました

2024/12/26 公開 

インテリアスタイリスト・みつまともこさん/新しい服をきれいに着たいから、手放す仕組みをつくりました

writer 石川理恵

おしゃれの舞台裏であるクローゼットを拝見しながら、服づきあいについてうかがう企画。

第1回は、インテリアスタイリストのみつまともこさんの家を訪ねました。

クローゼット収納は「わかりやすさ」が第一

▲「サロペットは、縦のラインができてすっきり見えるからよく着ています」

みつまさんのお住まいは、室内が自由に設計できるコーポラティブハウス。クローゼットには、イケアで見つけた前面がガラスの引き出しを取りつけたそうです。

「見えるところは『飾るように』、見えないところは『わかりやすく』が、私の収納のモットーです。

クローゼットは扉を開けたときに、どこに何があるのかがひと目でわかるようにしたくて、透明の引き出しを探しました」

▲家族それぞれが寝室にクローゼットをひとつ持っています。左側がみつまさんのクローゼット
▲シャツとボトムスはハンガーにかけて、カットソーやニットはたたんで引き出しへ。扉の内側にはバッグや帽子をかけています。
▲アウターや、ワンピースなどの丈の長い服だけは、廊下にある家族共有のクローゼットに収納しています。

衣替えはせず、オールシーズンの服を把握できるように

イケアで見つけた引き出しは、横幅が広くて収納力があるところも使い勝手抜群です。

1段目には、よくつけるバングル、サングラス、ハンカチなど、出かける際に身につけるものを収納。

引き出しの上には香水、アクセサリーが置いてあり、このクローゼットの前で身支度を整えられるようにしています。
「衣替えはしない」というみつまさん。ひとつの引き出しに、オールシーズンのカットソーをまとめています。左側に長袖を、右側に半袖を収納しているから、暑さが長引いたり急に肌寒くなったりしても、その日にぴったりの服をサッと選ぶことができます。
ニット類は、引き出しのいちばん下に収納。カシミアも含めて、ニットはすべて自宅で洗っているそうです。「ネットに入れて、洗濯機の手洗いコースです。洗剤はおしゃれ着用にして、仕上げに柔軟剤を使っています」

着ない服を手放すための、循環サイクルをつくる

「クローゼットにあるのは自分の好きな服ばかり。以前はたくさん持っていたけれど、ここ数年でだいぶ減らしました」

みつまさんが服の量を見直したのは、ご両親が高齢者施設に入居するにあたり実家を片づけたことがきっかけです。

「父と母が持っていた服の、半分以上がまったく着ていないものだったんです。一気に片づけるのは本当に大変だったので、私はまず『とっておく』をやめることに」

大好きだった高価なブランドの服も、数年着ていなければアプリでフリマに出品。すると、いいものは喜んで買ってもらえることがわかったそうです。

▲フリマに出すと決めた服は、布をかけてホコリがかからないように保管。「自分が着ている服より、取り扱いに気を使います」と笑うみつまさん。


「シルエットの旬って、ありますよね。長年、大切にしていたトレンチコートも今の私にはタイトに感じられて、手放したらすぐに買い手がつきました。若い人に着てもらったほうが似合うと思うし、着てくれる人に手渡したほうがいいと心から思っています」

一方、人に譲れないような服は、ウエスにして使い切ることにしたら、くたびれた服をいつまでも着ることがなくなりました。「うちは犬がいるので、足を拭いたりするのにもウエスがあると便利です」

▲ウエスはキッチンや洗面台に置いて使っています。

新しいものとの出合いは、ずっと楽しみたい

着てない服を手放して余白が生まれたら、何を着るのか迷わなくなり、新しい価値観に目が向くようになったと、みつまさんはいいます。

「フォーマル用の黒い服は一着だけになったけれど、ちょっとしたパーティーにはファストファッションの服で気軽に旬を取り入れても良いかなと思っています。高い服をずっと着るより、新しい服をきれいに着たいと、この歳になると思います」

人生の折り返し地点を過ぎ、残りの後半戦では身のまわりを「好きなものだけ」にしたいとも思っているそうです。それは服だけでなく、暮らし全般にいえること。

▲「将来、娘に引き継げたら」と、アーツ&サイエンスで出合った「EICHENLAUB(アイヘンラウプ)」のカトラリーを揃えました。


「ものより体験にお金を使いたい」と話すみつまさんが大切にしているのは、自分の心が動くかどうかです。

クローゼットの前に立ち、マンネリを感じるようになったら見直し時。そうして手放せばまた、新しいものがきっと入ってくるのですから。

▲タイトなトレンチコートを手放し、オーバーサイズなシルエットが旬なコートを購入。韓国ブランド「LIBERADD(リベラド)」のもの。
▲靴は、フラットで履き心地のいいスニーカーやサンダルをヘビロテ。「一足買ったら、一足手放すサイクルに」
▲毎年、新しいものが欲しくなるのがワンピース。以前はアースカラーなどの落ち着いた色味が多かったけれど、「顔映りもよく、気分もあがるから、最近は明るめの色味を選ぶように」

撮影/菊地和歌子
取材・文/石川理恵

プロフィール

みつまともこ

ディスプレイデザイナー・インテリアスタイリスト

夫、中学生の娘、愛犬との3人+1匹暮らし。サザビー(現サザビーリーグ)で衣食住にまつわるブランドのウィンドーディスプレイ、ショップデコレーション、撮影のスタイリングなどを手がけた後、フリーランスに。著書に『小さなスペースではじめる 飾る暮らしの作り方』『暮らしの図鑑 ガラス』(ともに翔泳社)がある。https://www.mitsumatomoko.com

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